今学ぶべきもの:大規模プロジェクトの企画開発、計画と運用

我が国は、経営手法、科学的管理技法、生産技術の多くを米国に学んできた。
 しかし、従前から個別技術の取得は進んだものの、新規の科学技術開発や巨大プロジェクトの開発・実施のような体系的組織的推進手法の導入には失敗したと指摘されている。

◎巨大プロジェクトの典型
 マンハッタン計画、アポロ計画そして高度道路交通システム(ITS)の実施には、それぞれ喫緊の政治的契機があった。
 ・マンハッタン計画は、ナチス政権による原爆開発との競争と先行がある。(経緯表
 ・アポロ計画は、冷戦体制下でソ連のスプートニクショックで遅れをとった宇宙開発競争での権威回復とキューバ危機を契機とする画期的計画の表明という政治事情があった。
 ・高度道路交通システム(ITS)は、冷戦体制崩壊後の米国の軍事産業の民生需要への転換の要請の下で、インターネットと「空のインターネット」であるGPSの二大軍事技術の民生転換を図るという喫緊の課題があった。ITSでは、GPSによるICBM誘導と同様に、車両の自動運転システムの開発が当初の目標とされ、民生利用にはデジタル道路地図の開発が必要とされた。

◎企画時の技術開発状況
 これらの計画は、いずれも
 ・具体的に立証された技術的裏付けをもっていない、新規の科学技術開発とその応用
 ・実現まで、極めて短期間の目標設定
という厳しい制約があった。
にもかかわらず、計画は実現した。
そして、既存技術をフル活用し、総合的に活用するという
 ・管理工学や統合システム手法の活用が見られた。
同時に、膨大な予算や巨大で複雑な組織の管理技法の開発と適用も行われた。

我々は、現在、未知の世界へのフロントランナーとして進むことを求められている。
見習うべき先進モデルのない世界での、新しい開発ノウハウが必要である。
そして、我々が見習うべき手法が、これらの大規模プロジェクトの開発推進過程に見られると考える。

◎科学的予算管理手法とロジスティクス
 「ロジスティクス」の用語が国防分野で利用され始めたのは、1975年頃であるといわれている。
 当時は第二次大戦後、冷戦体制、朝鮮戦争やベトナム戦争を経て、なお、膨大な国防費支出を余儀なくされ、その予算設定の効果的な管理手法が指摘された時期であった。
 そのための管理手法は、それまでのシステム分析や管理工学技法を応用すると共に、その当時のコンピュータシステムを活用することによって整備された。
 我が国では、関連する行財政管理手法としての科学的予算管理手法(PPBS)や情報化でのCALSプロジェクトが、その狭い専門領域でのみ評価され、流行言葉のように受け止められてきた。しかし、米国では、各種手法がその後、コンピュータや通信技術の革新と共に継続的・発展的に深化し、大規模組織における管理手法として活用されている。